海洋への汚染水放出について

汚染水の海洋放出についてですが、以下にまとめた通り、海洋への影響が甚大になる恐れがあり、回避すべきです。

特に懸念すべき項目として、(a)2021年の福島県沖地震後、原子炉建屋付近での放射性物質濃度の上昇が見られ、その全容がわからないこと(b)冷却水の注入を増やしていること(c)これらにより、汚染水の量と濃度は急激な増加が見込まれ、またその収束の目処が立たないこと があげられます。

しかしながら、根本的には汚染水を出さない冷却方法を確立すべきであり、原発事故後10年が経過した今も非循環型の軽水冷却を継続することによる破綻であると言えます。

現在の廃炉において、全体の廃炉プランを見直し、将来にわたっての環境影響を最小化するべく組み立てる必要があります。

また、<科学的に安全であれば>という議論はありますが、<科学>といっても、原子力工学の見解、海洋生態学の見解、医学の見解があり、またそれぞれの分野において、<安全側><慎重側><反対側>など、さまざまな立場からの見解があります。一方の見解がすべての真理を述べているわけではないのです。ということは、ある分野の見解が<科学的に安全>であるとされたとしても、(現在の状況を踏まえると)必ず甚大な影響が出ると評価する分野は存在します。

 

以下、昨年の夏における提言ですが、再度加筆・掲載します。

 

海洋への汚染水放出についてですが、

1)当初より反対の立場です。詳しくは追って追加しますが、以下のとおり
ー現在の汚染水タンク貯留の汚染水に含まれる核種の種類・量がすべて明確になっているわけではないこと。特にALPSが十分に稼働していなかった初期処理水、タンクに貯留されている間の放射性核種の分離(タンク下部に高濃度の核種が沈殿し、総量が不明になる可能性)など、不明要素は多々あります。また、福島県沖地震後の汚染水・処理水については、その全容がまだ明らかになっておらず、このような状況における汚染水の海洋放出は非常に危険であると考えられます。
ー風評被害だけではなく、汚染水に含まれる放射性核種は海流にのり太平洋全域に拡散することによる「測定可能な」影響があること。
ー放射性核種の中には、マグロなどの回遊魚に取り込まれ、アメリカ西海岸に到達するものもあります。北米でそれ(例えばセシウム137)の濃縮が確認され、実際に経済的被害が発生すれば我が国が賠償責任を負わされる可能性があります。実際に福島第一原発事故直後、北米でマグロからセシウムが確認され、同位体比から福島第一原発事故由来であることが論文発表されています。幸いその時は経済被害まで至っていませんが、今回は総量が多いため、そのリスクは存在します。
ーオリンピック開催予定国として、世界中の批判にさらされます。
汚染水排出による費用損失と信用損失は、タンク設置回避によって得られるコスト減を遥かに上回る可能性が高いです。特に現在、オリンピックを実施しようという時期に海洋放出を決定するようなことになれば、その愚かさを世界中から批判されるでしょう。

2)汚染水を出さない廃炉工法「アイスデブリ工法」とその改良工法を森重晴雄氏らとともに2016年から提案しています。これ以上汚染水を増やさない工法は可能です。燃料デブリを凍らせて循環冷却を別の冷媒で行えばよいのです。そのための低温脆性などの問題点を樹脂による補強で解決しています。
2016年原子力学会 https://confit.atlas.jp/guide/event-img/aesj2016s/3E06/public/pdf?type=in
福島第一発電所 燃料デブリ回収工法 アイス工法 資料 http://www.internetkobe.jp/fukushima/iceopen20160307.pdf

福島第一発電所 燃料デブリ回収工法 アイス工法 PPT http://www.internetkobe.jp/fukushima/atomos2016spring.pdf

2019春 原子力学会要綱集 https://confit.atlas.jp/guide/event/aesj2019s/subject/3C06/date?cryptoId=

上記の工法について、実証試験を行い、実施可能性を検討する必要があります。仮にこの工法が不十分であったとしても、汚染水を出さないと提案している工法がある以上、問題点を明らかにして現在提案されている工法と比較検討すべきです。

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以下、森重晴雄氏 より 加筆分(2021.4.8修正)

(3)福島第一廃炉の喫緊の課題は言うまでもなく増え続ける汚染水対策です。汚染水放出は国内外で議論を巻き起こし躓いていることは当事者が現状の課題を正しく認識し事実を公表できていないところに発端があり周囲を混乱させています。

現在、燃料デブリは各号機約80kw程度発熱しており、この冷却水が原子炉や格納容器、原子炉建屋のキレツから岩盤に染み出し、周囲の地下水と一緒になり汚染水となっているのです。冷却水が汚染水の源泉になっているのです。

そのうような状況のなかで今年2月13日地震発生後、この建屋や格納容器のキレツが増大し、格納容器内の冷却水位が低下しました。核燃料の温度上昇が危惧される為に東電は3月初めに冷却水を倍増すると発表しました。このとき東電はこのキレツが漏れ出た冷却水を全量回収し環境に問題とないとしています。
ここで改めて汚染水の発生量を試算してみましょう。地震発生前、冷却水は各号機毎日約80t注入されていましたが、冷却水は倍増していますので今では各機200t近く注入されている想定されます。建屋外に漏れた冷却水は地下水に混ざり汚染水となりますが、東電は全量回収したとしていますので、汚染水が増大していることを意味しています。汚染水は地震前には汚染水の処理量は1日300t足らず程度でしたが、地震後1000t近く増大していると予想されます。地震前では汚染水タンクの貯留できる余裕はあと2年分はありました。ところが地震後、汚染水は倍増していますので、貯留余裕は半減していると容易に想定されます。

この状況に呼応し政府は4月7日、汚染水放出可否を近々決定すると発表しています。
当然の成り行きです。

一方、2017年に山敷教授と私たちはASME(アメリカ機械学会ハワイ大会)にて震度5強程度の地震で汚染水タンクはズレ落ち、汚染水が大量に放出される危険性を警鐘しました。この発表席上、日本国の研究機関から質問を受けました。その後、国は地震によって一気に放出されることを恐れ計画的に汚染水を放出しようとしたのです。今年2月13日に発生した福島沖で発生した地震によってフクイチは震度6強の地震となりました。汚染水タンクは予想通り基盤の上をズレ、最大53cm移動したと報告されています。

今回の地震は汚染水問題に対して二つの問題が顕在化させました。一つは格納容器、建屋のキレツが地震によって、冷却水位が低下する為に冷却水増大させざるを得なくなり、それによって発生する汚染水が増大すること。二つ目は地震によって汚染水タンクが滑落し、汚染水が一気に流れ落ちること。

当方はこの問題を解決する為に以前から燃料デブリの冷却方法を水冷から空冷に改めるようにと国、東電に提案しています。空冷と言っても冷却効率を高める為に-30℃の窒素冷却のアイス冷却です。冷却水がありませんので当然汚染水は発生しません。
アイス冷却も格納容器の窒素を循環冷却させますので、循環冷気が外界を汚染することはありません

アイス冷却と聞くと凍土壁を連想されるでしょう。凍土壁は汚染水を海洋に漏らさないために1号機から4号機の山側地下に設定されました。海洋に汚染水が漏れている現在では成功したと言えないです。当方は凍土壁建設前から凍土壁は失敗すると警鐘していました。その理由はその地下は毎日、2回2m水位が変動が東電から発表されていました。これは潮汐現象です。護岸下の砂質層を通じて海水が地下に侵入していたのです。その容量は1日に2回10万t以上の海水が侵入していました。これらの海水を凍らせるには100万kw以上の冷熱が必要です。ところが凍土壁設備冷の却能力は6000kw程度です。とても凍らせることはできなかったのです。

格納容器内のアイス工法は海水侵入もありませんので僅かな冷却で済みます。唯一外気から建屋への熱流入です。夏の場合でも1機あたり240kwあれば十分です。これは中型ビルの夏場に冷やすクーラーの空冷より下回る値ですので十分に現実的です。

燃料デブリの冷却を水冷からアイス冷却に変更することが汚染水問題を根本的に解決させます。

4)福島第一廃炉の第2弾は燃料デブリの回収が予定されています。しかしこれも当事者が現状の課題を認識していません。燃料デブリの大半は原子炉を支えて、原子炉の底にあるペデスタル基礎に食い込んでいます。私はかつて原発向けの耐震構造を研究していました。この原子炉基礎も耐震化が国プロとなり電力、メーカー、建築会社に渡り研究されていました。高さ約30m、重量3000t以上のものを直径約7mの細い基礎が支えています。基礎から原子炉を眺めればピサの斜塔を見上げるようなものです。地震が発生すると発電所で最大の力がこの基礎に働きます。燃料デブリを回収する為にこの基礎を掘ることになり、自分の足元を切るようになり原子炉が耐震上危うくなります。2022年に行われる燃料デブリ回収は数100グラムしか回収する予定ですのでこのことは担当者間で既に認知されているのかもしれません。この課題を解決するには燃料デブリ回収前にその基礎の上に立つ原子炉を撤去するしかありません。原子炉は重量が500tを超え高濃度に汚染していますので燃料デブリ回収以上に困難が予想されます。なぜか後回しにされています。

5)福島第一廃炉の第3弾は繰り下がり燃料デブリの回収になります。

6)福島第一廃炉の第4弾は原子炉建屋の解体となります。

今回は汚染水の海洋放出に端を発していますが元々福島第一の廃炉計画が現状の課題に正しく向き合っていないところに問題がありました。この際見直すべきです。

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以下、山崎秀夫 元近畿大学教授 の見解(の一部)です。

放射能汚染廃棄物の海洋投棄に関する私なりに考えている問題点、対策等について以下のような6項目に集約できると思っています。

①公海に対する汚染物質の投棄が国際社会に受け入れられることができるのか?濃度とかその基準とかの問題ではなく、放射性物質を生態系に負荷することの合理的な説明ができていません。我々は環境汚染で生体濃縮が起こることを嫌というほど経験してきたはずです。

この問題を漁業者だけの問題に集約しようとしているいまのやり方は卑劣です。グローバルな視点での全地球人の問題として捉えるべきだと思います。

②一度海洋投棄を容認してしまうと、なし崩し的にこの処理法が常法として確立してしまうことが危惧されます。

③国の小委員会では最初に結論ありきで海洋投棄以外の方法については殆ど検討されていません。永久保管(トリチウム以外の長半減期核種も含まれるので永久です)、あるいは電解濃縮して減容してから永久保管するのが実現可能だと思っています。電解法で水中のトリチウムを濃縮することは、トリチウム測定の前処理法として昔から確立しており、このプロセスにおけるトリチウムの挙動もよく理解されています。

④そもそもトリチウムの生体影響についてはほとんど解明されていません。しばしば指摘されるようにトリチウムがDNA分子の中に取り込まれた場合には、トリチウムが放出するベータ線のエネルギーが低いことは「トリチウムは危険でない」という議論を担保するのもではなくなります。福島第一から放出される汚染水にはトリチウム以外の高濃度放射性核種が含まれることもリスクを高めます。

⑤「そもそも通常運転している原発や核燃再処理工場からはトリチウムや放射性希ガスが放出されている。だから少しぐらいトリチウムを投棄してもいいのだ」というロジックは詭弁で、通常運転している原発や再処理工場を閉鎖することが本来のあり方だと思います。

⑥放射性廃棄物の海洋投棄の前に、現在も制御されないまま放出されている汚染水(大部分は地下水として)の対策を確立することが先決である。デブリ冷却水と汚染地下水を完全に封じ込めるクローズドシステムの確立が急務である。恐らく、何年たってもデブリの取り出しはできないと思っています。福島の方には気の毒ですしショックでしょうが、福島第一の1,2,3号機は現在の場所でデブリも現在のままに密封保管することを考えた方がいいと思います。いろいろの案があるようですが、政治的なバイアスを強く意識しないといけないので表には殆ど出てきていません。現状のまま永久保管することがありうるというプロパガンダを進めることも必要と考えています。

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