福島第一原発からの放射性核種を含む貯留汚染水の海洋放出について

汚染水放出についてですが、

1)当初より反対の立場です。詳しくは追って追加しますが、以下のとおり
ー現在の汚染水タンク貯留の汚染水に含まれる核種の種類・量がすべて明確になっているわけではないこと。特にALPSが十分に稼働していなかった初期処理水、タンクに貯留されている間の放射性核種の分離(タンク下部に高濃度の核種が沈殿し、総量が不明になる可能性)など、不明要素は多々あります。
ー風評被害だけではなく、汚染水に含まれる放射性核種は海流にのり太平洋全域に拡散することによる「測定可能な」影響があること。
ー放射性核種の中には、マグロなどの回遊魚に取り込まれ、アメリカ西海岸に到達するものもあります。北米でそれ(例えばセシウム137)の濃縮が確認され、実際に経済的被害が発生すれば我が国が賠償責任を負わされる可能性があります。実際に福島第一原発事故直後、北米でマグロからセシウムが確認され、同位体比から福島第一原発事故由来であることが論文発表されています。幸いその時は経済被害まで至っていませんが、今回は総量が多いため、そのリスクは存在します。
ーオリンピック開催予定国として、世界中の批判にさらされます。
汚染水排出による費用損失と信用損失は、タンク設置回避によって得られるコスト減を遥かに上回る可能性が高いです。

2)汚染水を出さない廃炉工法「アイスデブリ工法」とその改良工法を森重晴雄氏らとともに2016年から提案しています。これ以上汚染水を増やさない工法は可能です。燃料デブリを凍らせて循環冷却を別の冷媒で行えばよいのです。そのための低温脆性などの問題点を樹脂による補強で解決しています。
 2016年原子力学会 https://confit.atlas.jp/guide/event-img/aesj2016s/3E06/public/pdf?type=in
 福島第一発電所 燃料デブリ回収工法 アイス工法 資料 http://www.internetkobe.jp/fukushima/iceopen20160307.pdf

 福島第一発電所 燃料デブリ回収工法 アイス工法 PPT http://www.internetkobe.jp/fukushima/atomos2016spring.pdf

 2019春 原子力学会要綱集 https://confit.atlas.jp/guide/event/aesj2019s/subject/3C06/date?cryptoId=

 上記の工法について、実証試験を行い、実施可能性を検討する必要があります。仮にこの工法が不十分であったとしても、汚染水を出さないと提案している工法がある以上、問題点を明らかにして現在提案されている工法と比較検討すべきです。

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以下、森重晴雄氏 より 加筆分

3)福島第一廃炉の第一弾が言うまでもなく増え続ける汚染水対策です。汚染水放出は国内外で議論を巻き起こし躓いていることは当事者が現状の課題を正しく認識できていないところに発端があり周囲を混乱させているところにあります。現在、燃料デブリは各号機約80kw程度発熱しており、これを冷却するために水が各号機毎日約80t注入されています。この冷却水が回収されているものの漏れ出た冷却水が原子炉や格納容器、原子炉建屋のキレツから岩盤に染み出し、周囲の地下水と一緒になり汚染水となっているのです。冷却水が汚染水の源泉になっているのです。第二の課題は臨界対策です。燃料デブリからは今も核分裂の火種となる中性子が放出されており、水がその周囲にあるとその中性子を反射させ、核分裂が連鎖する臨界の可能性があります。第3の課題として汚染水タンクには基礎がないことです。これは原子力規制委員会から公にされています。汚染水は増えており危険性が増大しています。震度5強程度の地震でズレ落ちる危険性があります。地震によって100万トン以上の汚染水が一気に太平洋に流出します。当事者は一気に放出されていることを恐れ計画的に汚染水を放出しているのかもしれません。この3つの課題に対して水による冷却は止めるべきです。そこで当方は下の図の通り燃料デブリを水冷から空冷に切り替える提案をしています。格納容器内は今も窒素で封入されています。この窒素を零下にするために格納容器内を循環冷却します。2号機と3号機の格納容器は-30℃まで設計上使用が認められています。しかし、1号機は常温でも脆性破壊の可能性がありますので脆性破壊に備えて格納容器の外側と原子炉の建屋との隙間10cmを樹脂材で埋め緩衝材にします。

4)福島第一廃炉の第2弾は燃料デブリの回収が予定されています。しかしこれも当事者が現状の課題を認識していません。燃料デブリの大半は原子炉を支えて、原子炉の底にあるペデスタル基礎に食い込んでいます。私はかつて原発向けの耐震構造を研究していました。この原子炉基礎も耐震化が国プロとなり電力、メーカー、建築会社に渡り研究されていました。高さ約30m、重量3000t以上のものを直径約7mの細い基礎が支えています。基礎から原子炉を眺めればピサの斜塔を見上げるようなものです。地震が発生すると発電所で最大の力がこの基礎に働きます。燃料デブリを回収する為にこの基礎を掘ることになり、自分の足元を切るようになり原子炉が耐震上危うくなります。2022年に行われる燃料デブリ回収は数100グラムしか回収する予定ですのでこのことは担当者間で既に認知されているのかもしれません。この課題を解決するには燃料デブリ回収前にその基礎の上に立つ原子炉を撤去するしかありません。原子炉は重量が500tを超え高濃度に汚染していますので燃料デブリ回収以上に困難が予想されます。なぜか後回しにされています。

5)福島第一廃炉の第3弾は繰り下がり燃料デブリの回収になります。

6)福島第一廃炉の第4弾は原子炉建屋の解体となります。

今回は汚染水の海洋放出に端を発していますが元々福島第一の廃炉計画が現状の課題に正しく向き合っていないところに問題がありました。この際見直すべきです。

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